財政破綻のトリガー(島田晴雄)

財政破綻を引き起こし得るトリガーを、4点整理しておきましょう。第1に、財政債務が国民純貯蓄を上回る状態です。この状態になれば、国内で国債を消化する余力がなくなってきます。余力がなくなれば、国債価格が適正に決定されない不安定な状態になるでしょう。 第2に、経常収支の赤字が定着する状態です。国債が国内で消化できなければ、海外投資家を頼みにするしかありません。ところが、経常収支が赤字になっていれば、国内には余資がないのだと世界は分かっていますので、国債が買い叩かれるでしょう。国債価格は下がっていきます。このようなことが起きるのではないかと市場関係者が予想すれば、非常に不安定な状態になり、ちょっとしたショックで引き金が引かれて、財政が崩壊することがあり得ます。 第3に、いわゆるハゲタカの存在です。彼らは、国債だけではなくさまざまな資産が予想を超えて変動すると見込まれる場合、先物で大量売りを仕掛けて、相場のさらなる下落を招きます。他の人たちが売り切ったところで、底値を狙って買い、反動で価格が上昇することによって大もうけしようとするのです。実は日本の国債も、何度も大小のハゲタカに狙われてきました。しかし、日本経済の状態が何とか持続していたので、いずれも失敗に終わっています。しかし、今後10年、15年と構造変化が起きてくるでしょうから、ハゲタカが本気で取り組めば、財政破綻さえ引き起こされるかもしれません。 第4に、戦争や自然災害、大型倒産、あるいは政治の混乱です。